practice

「Rs'Ink.」が活動する際の「活動指針」(Guideline)と「活動方針」(Policy)についてお伝えします。

「活動指針」は活動の具体的な計画やアウトラインを示します。

「活動方針」は活動において守っている価値づけについて示します。

2017.1.22 「ナラティ部」 撮影者:ねぎぽん
2017.1.22 「ナラティ部」 撮影者:ねぎぽん

GUIDELINE

1.学習に病からの視点をいれること

病気と健康の「間」で「学ぶ」をデザインするとは、個人においてはキャリア学習、組織においては組織開発、これまで教育学や経営組織論で論じられてきたテーマに病気という否定的な契機からの視点を織り交ぜていくことです。そのためにも病気の人の経験を得難い資源として活用できる場をつくっていきたいと考えています。学生から社会人へ、一般職から管理職へという、キャリア上の遷移=変容(トランジション)を個人としてどう乗り越え、組織としてどう支えていくかという問いが成り立つのなら、健康から病気への遷移、病気から健康への遷移を同様に考えてもよいのではないでしょうか。病気からの「治癒」と経験からの「学習」は同一のものであるという仮説を検証していきたいと考えています。

2.学習に身体を通じた経験を取りいれること

一般的に学習は知的かつ意識的な営みだと考えられがちです。しかし、本質的に学習は頭や心だけで完結する非物質的な営みではありません。そうではなくて、自分自身の身体、共に生きる他者、物質的な対象、それらすべてを含んだ環境と個人が関係することによって生じてくる営みです。したがって、わたしたちが学びの場を提供する際には、学びを純粋に知的な活動にとどめてしまうことをせず、身体や周囲環境とも交感する運動としてデザインするように心がけています。身体の重さを実感する最大の局面こそ「病気」にあることは、言うまでもありません。

3.学習とケアの世界を結ぶこと

行政上の縦割りから厚生労働省の管轄するケアは「医療・福祉」と呼ばれ、文部科学省の管轄するケアは「教育」と呼ばれ、別のものであると思われがちです。しかし、「治癒」と「学習」は根底において心の同一の働きから生まれてくる二つの側面であると、わたしたちは理解しています。そこで、わたしたちは両者の分断をもういちど結び付けることを企図します。医療畑の人が教育畑の人から学び、教育畑の人が医療畑の人とともに考える。そこからイノベーションを導くことを試みます。

2017.3.15 「SHOKUBA Design Lab.」 撮影者:ねぎぽん
2017.3.15 「SHOKUBA Design Lab.」 撮影者:ねぎぽん

policy

1.「間」にいつづけること

AとBの「間」にいるということは、AとBのどちらにも優位(劣位)を置かないことだと考えています。したがって、病気と健康の「間」もまた同様で、病気と健康を同等に扱うということにもなります。健康な人に病気の人の経験を伝えることをすると同時に、病気の人にも健康な人の立場を理解していただくことを考えています。

 

したがって、「病気の人=弱者」とはみなしません。「Rs' Ink.」の求めるものは弱者の「支援」とは別のものです。そして、病気の人の「支援」という言葉を使ってしまうことで「健康な人=支援をする人」「病気の人=支援される人」という関係性を定めてしまう危険性があるとも考えています。健康が強く望ましく、病気が弱く望ましくない、だから支援が必要だ。そういう無意識的な前提は疑ってしかるべきです。病気の人を支援しなければという振る舞い自体がかえって健康を優位に病気を劣位に置く構造を強化してはいないでしょうか。

 

無意識の構造はぜひとも動かしたい。そのためにも健康と病気の対話が必要です。健康な人が病気の人を支援するのではなく、病気の人が健康の人の学びの糧を提供する、そういった関係性の逆転を仕掛けてみる。もし優劣のシーソーを逆転することができれば、そこに変化や動きの余白が生まれてきます。

 

もしわたしたちが病気の人に提供できるものがあるとすれば「支援」や「癒し」ではなく「挑戦」だと考えています。ここで「挑戦」とは、自分たちとは異なる人に対して価値を提供することを意味します。「間」にいるということは、ひとつの領域の知見を他の別領域を接続していく絶え間ない努力であって、そうすることで新しい価値を創造していこうとする実践です。

2.「エビデンス」に従うこと

わたしたち「Rs'Ink.」の活動では、心と体の関係を整えるための心理学的な技法としてマインドフルネス瞑想や各種心理技法を取りいれることがあります。それらは心身のバランスを整えるために有意義であると考えるものですが、直接的に医療的な効果まで認めているわけではありません。

 

わたしたちの活動は主として学習と教育に軸足を置くもので、医療においては医療的なエビデンスのある療法、効果の認められた標準治療を支持します。

 

昨今は心理学系ビジネスがたいへんな盛り上がりをみせておりますが、科学的エビデンスに欠けた知見や疑似科学に類する主張に偏ったものも少なからず見受けられます。わたしたち「Rs'Ink.」が、科学的な根拠や医療的なエビデンスに欠けた言説を医療的な行為として主張するビジネスに与することはありません。また、学習理論においてもアカデミックな知見に即したものであるように努めます。

3.「プレイフル」であること

病気の経験はときに苦しくきれいごとでは済まないこともあります。サバイバーの人生を支援したいと日夜活動される方の献身には心から頭が下がります。支援活動は決して遊びではできないことだと痛感いたします。

 

ただ、わたしたち「Rs'Ink.」の活動は病気と健康の「間」に立つことにあります。わたしたちが「病」をテーマにするとき、健康な人に病気の人とのご縁つなぎを模索することを意味しています。そこで重さや苦しさが表に出てしまうと、なかなか健康な人にはアプローチすることは難しい。だから、病気に縁のなかった人にも興味と関心をもってもらえるようなデザインを心がけています。

 

わたしたちの活動は「プレイフル」であることを志します。まず楽しい活動であること、関わってみたいと感じてもらえること、また続けてみたいと思っていただけることを第一に目指します。ただ楽しいから続けていたら、いつの間にか何かが変わっていた。それがわたしたちの求める理想です。